知的発達症について

知的発達症(知的障害)は、知的機能と、日常生活や社会生活への適応能力の困難さを特徴とする神経発達症です。以前は「精神遅滞」や「知的障害」という名称が一般的でしたが、現在ではDSM-5(精神疾患の世界的な診断基準)に基づいて「知的発達症」と呼ばれることが多くなっています。
知的発達症による困難さは、発達段階によって異なります。乳児期には運動発達の遅れや周囲への反応の乏しさ、体重増加不良などがみられ、幼児期には言葉の発達の遅れが目立ち、学童期になると学習の遅れや集団生活への不適応などがみられるようになります。軽度の場合は、学童期以降に不登校や、抑うつ状態をきたしてから周囲が気づくこともあります。
原因は、遺伝子疾患や染色体異常、胎児期の感染症、周産期の低酸素症などの合併症、出生後の脳炎など、原因が判明しているものもありますが、原因不明の場合も少なくありません。
知的発達症の診断は、知能検査で測定されるIQだけでなく、実際に現れている困難さ、つまり日常生活における適応能力なども鑑みて、総合的に判断されます。適応能力は、概念的領域(言語理解、計算など)、社会的領域(コミュニケーション能力、対人関係など)、実用的領域(食事、着替え、金銭管理など)の3つの領域で評価されます。
知的発達症の根本的な治療法は現在のところなく、適応機能の向上と併存症の予防、診断、治療を目標とした対策が基本になります。一般的には早期発見・早期介入によって、お子さま本人の特性に合わせた環境を整えるため、適切な社会的資源を選択することが重要となります。
支援には特別支援学級や特別支援学校などの教育機関、就労移行支援事業などの就労支援、療育手帳などの福祉サービスなど、様々な制度があり、これらと連携していくことが大切です。当院では常勤の精神保健福祉士がおり、適時相談に応じていきます。