アレルギー

気管支喘息

気管支喘息は、空気の通り道である気管支に慢性的な炎症が起こり、様々な刺激に対して過敏になっている状態です。ダニやハウスダストなどのアレルゲン、風邪などのウイルス感染、タバコの煙、天候の変化、運動などが刺激となって、気管支が急に狭くなる発作（急性増悪）を起こし、呼吸困難を引き起こす場合もありますので注意が必要です。喘息の発作を繰り返すと、気道の構造が変化して狭くなり、元に戻りにくくなることがありますので、適切に診断し治療することが大切です。

治療の目標は、発作を起こさないように炎症を抑え、日常生活に支障がないようにすることです。そのため、発作を抑える薬（レリーバー）と、発作を予防する薬（コントローラー）の2種類の薬が使われます。レリーバーは、主に気管支拡張薬が用いられ、発作時に気管支を広げて呼吸を楽にしてくれます。またコントローラーとしては吸入ステロイド薬、ロイコトリエン受容体拮抗薬が中心となり、気道の炎症を抑えて発作を起こりにくくします。これらは予防薬ですので、発作が起こっていないときでも吸入・内服をすることが治療となります。吸入ステロイド薬は、飲み薬や点滴のステロイド薬に比べると全身への副作用は少ないとされていますが、医師と相談しながらの治療薬の減量、中止が大切です。

薬物療法に加えて、アレルゲンを遠ざけるために部屋の掃除をこまめに行ったり、ダニ対策をしたりする環境整備も重要です。タバコの煙は喘息を悪化させるため、受動喫煙を防ぐことも大切です。お子さまの喘息は、保護者の方にもご協力をいただき、適切な治療と環境管理を続けることで発作をコントロールし、普段通りの日常生活を送ることが可能になります。

アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎は、かゆみを伴う湿疹が長期間にわたって良くなったり悪くなったりを繰り返す皮膚の病気です。お子さまの約10％以上がかかると言われており、アレルギーを起こしやすい体質を持っていると発症しやすくなります。また、食物アレルギーの原因のひとつとして知られています。

アトピー性皮膚炎の原因は、皮膚のバリア機能の低下と考えられています。バリア機能とは、皮膚の一番外側にある角質層が体内の水分が蒸発するのを防いだり、細菌やウイルスなどの侵入を防いだりする働きのことです。アトピー性皮膚炎では、このバリア機能が弱まっているため、様々な刺激に対して皮膚がアレルギー反応を起こし、炎症を起こしやすくなっています。

症状は、強いかゆみのある湿疹が体の様々な場所に左右対称に出ることが多く、乳児期は顔や頭から始まり、体、手足へと広がりますが、成長するにつれて首、手足の関節など限られた部位に症状が出るようになります。かゆみが強いため、掻いてしまうことでさらに皮膚のバリア機能が低下し、症状が悪化する悪循環に陥りやすいため注意が必要です。乳児湿疹とアトピー性皮膚炎との区別は完全には難しいですが、どちらもバリアの破壊は起きており、食物アレルギーの原因になり得ると考えています。なかなか治らない乳児湿疹も、積極的に治療を行うほうが良い場合もありますので、お気軽にご相談下さい。

アトピー性皮膚炎は、長期間の治療が必要な病気ですが、根気強く治療を続けることで、症状をコントロールし、健康な皮膚を保つことができます。治療の基本は、スキンケア、薬物療法、悪化因子の除去の3つです。

スキンケアでは、皮膚を清潔に保ち、保湿剤をしっかり塗ることで皮膚のバリア機能を補います。薬物療法では、ステロイド外用薬などを使って炎症を抑えます。ステロイド外用薬は、医師の指導のもと適切に使用することで効果を最大限発揮し、副作用を極力減らすことができます。また、落ち着いた皮膚の状態を維持するために、タクロリムス軟膏、ジファミラスト軟膏、デルゴシチニブ軟膏などのお薬を適宜併用していきます。アトピー性皮膚炎の悪化因子としては、体調不良、ダニやホコリ、ペット、汗、食べ物、ストレスなど様々なものがあります。完全に取り除くことは難しいかもしれませんが、いろいろと工夫しながらそれぞれに合った対策を見つけていきましょう。

食物アレルギー

食物アレルギーとは、特定の食べ物を摂ることによってアレルギー反応が引き起こされるものです。
食物アレルギーで主な原因となる食物としては、乳児期には鶏卵や乳製品、小麦などがあります。また学童期・成人期では甲殻類、魚介類、小麦、果物、ピーナッツなどが原因になりやすいと言われています。近年では、低年齢でもナッツアレルギーのお子さんが増えてきています。

食物アレルギーを発症した場合、皮膚の蕁麻疹やかゆみなどの症状、咳や喘鳴（ヒューヒューという呼吸音）などの呼吸器症状、瞼や唇が腫れる粘膜症状や、腹痛、嘔吐、下痢などの消化器症状が現れることもあります。重症の場合、アナフィラキシーを呈することもあります。重症化させないためには、できるだけ早期に診断、介入していくことが大切だと考えています。

アレルギーの原因となる食物を特定することが治療のための最初のステップです。丁寧な問診や、血液検査、皮膚テストなどのアレルギー検査を実施しアレルゲン食物を特定していきます。原因食物が判明したら、必要に応じて食物負荷試験などを実施する場合もあります。それらの結果を併せ、医師の指導のもとで安全な量のアレルゲン食品を少しずつ食べていくことで、治癒を目指します。
ごきょうだいが食物アレルギーだったり、お子さんが湿疹をお持ちだったりして、お子さんのアレルギー体質が疑われる場合でも、食物アレルギーを恐れて食品の摂取開始を遅らせることはむしろリスクを高めます。ご心配がある場合は、なるべく早期にご相談ください。

花粉症・アレルギー性鼻炎

アレルギー性鼻炎には、「季節性アレルギー性鼻炎」と「通年性アレルギー性鼻炎」があります。「季節性アレルギー性鼻炎」は、いわゆる花粉症のことで、原因（アレルゲン／抗原）となる花粉の飛ぶ季節に合わせて症状が出ます。

花粉症は、特定の植物の花粉に対し、免疫システムが過剰反応することで発症します。そのため、まず、原因となる花粉を遠ざけることが大切で、その花粉が飛ぶ季節には、マスクやゴーグルを使用したり、服に花粉を付けたまま室内に持ち込まないようにしたりするなどの対策が必要になります。
花粉症を発症した場合の治療法としては、抗ヒスタミン薬などによる薬物療法があります。鼻の粘膜の炎症が強い場合は、点鼻ステロイド剤を使用する場合もあります。またスギ花粉をアレルゲンとする花粉症の治療法として、当院では舌下免疫療法を行っています。

「通年性アレルギー性鼻炎」は季節によらず発症するもので、主に原因（アレルゲン／抗原）となるのはハウスダストです。ハウスダストは1㎜以下のチリやホコリのことで、ダニの死骸やフンのほか、カビ、細菌、花粉、繊維のクズ、人間の皮膚片やフケ、ペットの毛など様々なものが含まれます。これらに対して免疫システムが過剰に反応し、鼻炎の症状が現れます。

アレルギー性鼻炎の症状は、くしゃみや鼻水、鼻づまり、目のかゆみなどですが、それらによって生活面や仕事、学業に、以下のような悪影響が出てしまうことも少なくありません。以下のようなお悩みがある場合はお気軽にご相談ください。

舌下免疫療法

当院はアレルギー性鼻炎に対する舌下免疫療法を行っています。これは毎日錠剤を舌の裏に1～2分含むことにより、アレルギー性鼻炎の症状を長期にわたって抑える、あるいは軽減するアレルゲン免疫療法のひとつです。

免疫療法は、これまでも皮下注射では実施されてきましたが、舌下免疫療法の登場により、家庭でも行え、お子様でも無理なく受けられるようになりました。