自閉スペクトラム症について

自閉スペクトラム症(ASD:Autism Spectrum Disorder)は、かつては自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー症候群などと呼ばれていたものを包括する概念です。社会的なコミュニケーションや対人関係の困難さ、特定の行動への強いこだわりなどを特徴とする神経発達症の一つで、症状は人によって大きく異なり、その程度も様々です。
自閉スペクトラム症は、生まれつきの脳機能の問題であり、様々な要因が複雑に関与していると考えられています。親の育て方や愛情不足が原因ではありません。
症状としては言葉の遅れ、反響言語(オウム返し)、会話が成り立たない、身振りや視線を合わせないなど、コミュニケーションや社会性の障害が多く見られます。相手の気持ちを理解することが苦手なため、人との関係がうまく築けず、一人でいることを好む傾向にあります。また、特定の興味や事柄への強いこだわりがあり、興味があるものに関していつまでも話していたり、膨大な知識を持っていたりします。また感覚過敏、常同行動(自分のルールや手順へのこだわり)なども特徴的です。
また自閉スペクトラム症の子供は円滑な対人関係が築きにくく、思春期に周囲と溶け込めないことから不安・抑うつ症状を発症するリスクも高いとされています。
自閉スペクトラム症の特性を大きく変えることは難しいとされています。しかし、本人の特性に合わせた療育・教育的支援を行うことで、社会生活を送る上で必要なスキルを身につけることが期待できます。周囲の理解とサポートが重要であり、本人の特性を理解した上で、適切なコミュニケーション方法や環境調整を行うことが大切です。また、症状によっては薬物療法が用いられる場合もあります。
自閉スペクトラム症は個性のひとつとも言え、置かれた環境によって成功する場合や、逆に孤立して生きづらさを感じる場合もあります。本人がその特性を活かしながら、社会の中で生き生きと過ごせるよう、周囲の理解と適切な支援が求められます。