注意欠如多動症について

注意欠如多動症(ADHD:Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder)は、不注意(注意欠如)、多動性、衝動性 の3つの特徴を中心とした神経発達症です。これらの特性は、年齢や発達段階に応じて現れ方が異なります。
「不注意」とは集中力の欠如、気が散りやすい、忘れ物が多いといった特性を指します。「多動性」は、じっとしていられない、落ち着きがない、過剰に動くといった状態を指します。 「衝動性」は考える前に 行動してしまう、順番待ちができない、衝動買いをしてしまうといった行動を指します。これらの特性をもつお子さまは、学校生活で注意されたり叱られたり、友だちともトラブルになることが多いため、失敗体験から自尊心が低下し、抑うつ状態や不安症が生じる場合もあります。
ADHDの原因は完全には解明されていませんが、脳内神経伝達物質の働きが関係していると考えられています。自閉スペクトラム症などと同様、親の育て方やしつけが関係しているわけではありません。ADHDは生まれ持った脳の機能の特徴とも言えますので、治療の方針はその特性を本人や周囲の方が理解して、生活への支障を軽減していく、ということが基本になります。
一般的には、ADHDのお子さまが生活しやすい環境を整えたり、社会参加に必要なスキルを身につけたりするための支援を行っていきます。たとえば翌日学校に持っていくもののリストを作って一緒に確認する、授業中に気が散らないよう刺激の少ない席にしてもらうなど「環境調節」を行う、また順番を守れた時には評価してあげるなど、成功体験を積み重ねることで、行動の変化を促していくなど、根気よく学んでいくことが大切になります。
このほか、どうしても日常生活に支障をきたしてしまう場合など、必要に応じて薬物治療を行うことがあります。使用するのは脳内神経伝達物質の調整を行う薬で、特性による社会生活の困難さを軽減することにより、日常生活を円滑に行えるように補助します。